歌川国芳の落書きモチーフにしたゆかた新作 大胆なデザインと生地の風合い特徴に

江戸末期の浮世絵師の歌川国芳がいます。当時、幕府の天保の改革により出された奢侈禁止令では、役者絵や美人画も取締り対象となりましたが、国芳は反骨精神で落書きを装った「荷宝蔵(にたからぐら)壁のむだ書き」といった作品を残しています。

そんな国芳の〝むだ書き〟をモチーフにしたゆかたが登場しました。1894(明治27)年に創業、 ゆかた製造卸「三勝」(東京都中央区)がこのほど発表した2022年夏のゆかた新作です。

「荷宝蔵壁のむだ書き」ゆかたは、四代目尾上梅幸の当たり役花園や、五代目澤村宗十郎の清七、心中場面の相合い傘、尻尾が二股になっている猫の妖怪の猫又などをデザインしています。

大胆なデザインと生地の風合いが特徴で、刷毛書きをしたような縦縞の織りが特徴の「綿紬(つむぎ)刷毛目」、黒糸の節が特徴の赤坂紬を用いた「綿紬ネズ」、火消し半纏で使われる刺し子生地の「刺し子」など生地や風合いの異なる3種類のバリエーションを揃えています。

明治時代から多くのゆかたや手ぬぐいは、染料を注いで染める伝統的な型染め「注染」で染められています。重ねた生地の上に伊勢型紙を置き、特殊な糊で防染。その上から染料を注ぎ、模様部分を染め上げる手法とされています。

一度に何枚もの生地を染められるほか、生地の表裏なくきれいに染まるのが特徴ですが、「荷宝蔵壁のむだ書き」は、2枚の異なる伊勢型紙を用い、この注染を2回繰り返す「細川染め」という手のかかる技法で染め上げたそうです。

「荷宝蔵壁のむだ書き」のほか、今回は同社のアーカイブ柄など約300種類のゆかた反物を用意しているとのことです。

歌川国芳「荷宝蔵壁のむだ書き」は、綿100%で反物巾は約40センチ、長さ約13メートル。反物価格は各77,000円(税込み)。

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